あなたのしあわせが、わたしのしあわせ。


―幸福論―


「俺この考え方嫌い」
 ホテルのソファで横になりながら本を読んでいたエドは、突然エンヴィーにその本を投げつけると、そう発言した。
 つい先程まで機嫌良く読み進めていて、いくらエンヴィーが話し掛けようとも構いもしなかったというのに突然の行為は何なのか。
 ハードカバーの厚みが有る本は運悪くエンヴィーの腕に当たっていた。
「何なのさもー、物投げないでよね」
   エンヴィーは当たり前の不満を言いながらその本を手にとって眺める。
 別に、至って普通の小説だった。何処にでもある様なありふれた推理小説。何処をどう見ても、エドの様な意見が生まれる文章は無い。有り得るとすれば犯人の身勝手な供述かも知れないが、エドが読んでいたページはそんなに後ろではない。まだまだ中盤、といった所だったのだ。
「何が嫌なのさ」
「……128ページ」
言われるままにそのページを開く。けれどそのページは、カップルがくつろぎながら談笑をしているごく普通なもの。
 あえて嫌だというならば、いちゃついていることに少しばかり苛立ちを覚えることだが、いくら何でもそれはないだろう。
 何度か読み返して、もしかしたらこれだろうか、というものが一つだけあった。
 ――貴方の幸せが私の幸せよ――
 女が男に向かって言った台詞。普通なら読み流してしまう様なものなのだが、それでもどうにか前向きに考えると有り得るのはこれだけだった。


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