そうして幾度か巡った夜。
今晩は綺麗な満月だねと、黒い空に浮かぶ月を見てエンヴィーは言って――言ったかと思ったらとんでもないことを宣ったのだ。
「きみってさぁ、お月さまみたいだよね」
「はぁ?」
あまりに突然のことだったから、エドは驚きに思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
それを全く無視してエンヴィーはサラサラとエドの髪をいじる。掬っては落とし、掬っては落とし。金色の髪が流れる様をただじっと見つめて。
何なんだと思いながらも、その行為に何一つ文句を言うこともなく、やれやれと半ば呆れた様に視線を本に戻すエド。彼の奇行はいつものことの様な気がしていた。
「同じ色でキラキラ光ってさぁ。綺麗だよねー」
言いながら笑顔で髪を口元に運ぶエンヴィー。
エドの髪は決して短くはないが、長いと言う程長くもない。それなのに延々と髪をいじられ、引かれ、では体が多少引っ張られて揺れるのだ。
ふぅ、と溜息を洩らして本を閉じ、エドはじろりとエンヴィーを軽く睨み付ける。さすがに気が散ってしまって、読書になど集中出来なかった。
「……だから月だってか?」
「うん。あー目もだよね。綺麗な金色」
そう言ってエドを真っすぐに見つめると、恥ずかしいのかそっぽを向かれてしまい、名残惜しそうな顔をするエンヴィー。
「月なら白銀だろ」
だから自分は月とは似てなどないのだと主張するエドに、エンヴィーは反論する。
「えぇー? お月さまは金色だよー。……きみと同じ色だと思うけどなぁ」
「……太陽とならあるけど、月と比べられたことなんかねぇぞ……」
前に、アルがエドの髪をそう称していた。まるで太陽みたいだと。
何でみんなして天体と俺の髪なんか比べんのか訳分かんねぇ。
顔をうっすらと紅く染めて、そうエドは思っていた。
「太陽……ねぇ。確かに太陽と言えないこともないけどさ。みんなお月さまのことちゃんと見てないんじゃない?」
窓を指差して確認を促すエンヴィー。
それを見てまずい、とエドは思っていた。この顔は面白くないとゴネ始めている顔だ。十日も付き合えば何となく掴めてくる。それが子供の様に真っすぐなら尚。
思考を巡らせ、行き着いた答えは《構ってやらないと面倒なことになる》だった。
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